研究助成

2021年度 生命科学研究助成

ダブル・コオペラティブ効果をスイッチングしている細胞膜内分子の特定

研究題目 ダブル・コオペラティブ効果をスイッチングしている細胞膜内分子の特定
年度/助成プログラム 2021年度 生命科学研究助成
所属 東京大学 生産技術研究所
氏名 杉原 加織
キーワード 抗菌ペプチド / 薬剤耐性菌
研究結果概要 抗菌ペプチド(AMP)は、細菌に対するその有効性から抗生物質の代替品として期待されている。しかし、既存のAMPベースの薬剤の多くには深刻な副作用があり、幅広い使用が制限されている。異なるタイプのペプチドを組み合わせることで、抗菌効率が向上することが示されており、このような限界を克服する戦略を世界中の研究者が模索している。LL-37とHNP1の2大抗菌ペプチドを混合することで、より効率的に細菌を死滅させるとともに、哺乳類細胞膜の溶解を抑制して宿主のダメージを最小限に抑えるという抗菌ペプチド二重協同効果は、効率的で安全な抗生物質への応用の可能性から注目されている。しかし、そのメカニズムは全く不明であった。本研究では、真核細胞膜と大腸菌膜の脂質組成を変えるだけで、この二重協同効果を合成脂質系で部分的に再現できることを報告した。実際の細胞膜は脂質だけでなく、膜タンパク質や多糖類など非常に複雑であるが、われわれのデータは、二重協同効果の主要な原動力のひとつが単純な脂質-ペプチド相互作用であることを示唆している。
公表論文 Zheng, J. L.; Das, B.; Sugihara, K.*, Anal. Chem. 2024, 96 (3), 949-956. Das, B.; Shioda, N.; Yagi, S.; Oaki, Y.; Sugihara, K.* Adv Mater Interfaces 2024, 11, 2300745. Zheng, J.; Jo, S.; Chen, J.; Das, B.; Juhasz, L.; Cabral, H.; Sugihara, K.* Anal. Chem. 2023, 95 (30), 11335–11341. Hou, Y.; Sugihara, K.* Langmuir 2023, 39 (24), 8441-8449. Ikawa, T.; Fujita, K.; Kiuchi, S.; Li, M.; Kushima, A.; Takase, H.; Das, B.; Morita, M.; Todo, H.; Pennington, M.; Sugihara, K.* Heliyon 2023, 9 (4), e15359. Chen, J.; Zheng, J.; Hou, Y.; Sugihara, K.* Chem Commun 2023, 59 (25), 3743-3746. Zhao, J.; Sugihara, K.* J Phys Chem B 2021, 125 (44), 12206–12213. Das, B.; Jo, S.; Zheng, J. L.; Chen, J. L.; Sugihara, K., Das, B.; Jo, S.; Zheng, J. L.; Chen, J. L.; Sugihara, K.*, Nanoscale 2022, 14 (5), 1670-1678.