研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究助成

産後雌マウス特有のストレス対処機構に基づく新規産後うつ治療薬の開発

研究題目 産後雌マウス特有のストレス対処機構に基づく新規産後うつ治療薬の開発
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究助成
所属 国立大学法人 北海道国立大学機構 帯広畜産大学 獣医学研究部門
氏名 室井 喜景
キーワード 産後うつ / ストレス対処 / 前頭前皮質 / α2アドレナリン受容体拮抗薬
研究結果概要 うつ病とストレス対処は相関するため、産後女性のストレス対処行動を変えることは産後うつの治療戦略として有効だと考えられる。産後雌、未経産雌、雄マウスのそれぞれに亜慢性的にストレスを負荷した後、強制水泳試験や尾懸垂試験を用いてストレス対処行動を評価したところ、産後雌特異的に不動時間が減少し能動的ストレス対処行動が亢進することがわかった。そこでストレス対処の制御に関わる前頭前皮質について、組織学的手法、ノックダウン、化学遺伝学的手法等を用いて解析した結果、亜慢性ストレスにより前頭前皮質のα2 アドレナリン受容体シグナルが低下することで同領域のグルタミン酸神経活動が亢進し、能動的ストレス対処行動が亢進することがわかった。この結果を踏まえ、前頭前皮質のα2 アドレナリン受容体シグナルを低下させれば産後雌の能動的ストレス対処行動を亢進できると考え、α2 アドレナリン受容体拮抗薬を処置したところ、産後雌特異的に前頭前皮質のグルタミン酸神経活動を亢進し、能動的ストレス対処行動を亢進できることがわかった。
公表論文 1. Noradrenergic regulation of the medial prefrontal cortex mediates stress coping in postpartum female mice, Molecular Neurobiology, in press, Horie I., Muroi Y, Ishii T. 2. Locus Coeruleus-Noradrenergic Neurons Regulate Stress Coping During Subchronic Exposure to Social Threats: A Characteristic Feature in Postpartum Female Mice, Cell Mol Neurobiol, 43, 2359-2376, 2023, Nakamura A, Muroi Y, Ishii T.