研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究助成

嫌悪体験の記憶を制御する記憶プロセス群の分子基盤の解明

研究題目 嫌悪体験の記憶を制御する記憶プロセス群の分子基盤の解明
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究助成
所属 東京農業大学 生命科学部 バイオサイエンス学科
氏名 福島 穂高
キーワード 恐怖記憶制御 / 海馬 / マウス
研究結果概要 本研究の目的は、嫌悪体験の記憶(嫌悪記憶)が思い出(想起)された後に、海馬において、どのような分子機構を介して再び記憶が脳に貯蔵されるのかを明らかにすることである。場所と恐怖体験との関連付け試験によりマウスに恐怖記憶を形成させ、この翌日に恐怖記憶を想起させた。マウス海馬からRNAを調整して様々な遺伝子の発現量を解析したところ、セカンドメッセンジャーであるcAMPを分解するPDE4Bの発現量が有意に低下していた。加えて、恐怖記憶を想起させる前にPDE4B阻害剤をマウスへ投与することにより、想起が抑制され、その後の恐怖記憶が減弱したことから、PDE4Bは恐怖記憶の想起及びその後の恐怖記憶制御機構にも関与することが示唆された。なお、これらの研究成果は、国際学術誌であるMolecular Psychiatryに掲載された。本研究において同定された分子機構を標的とした新規治療法が開発されれば、PTSDなど恐怖体験をもととする精神疾患の治療・予防に大きく貢献することが期待される。
公表論文 Fear memory regulation by the cAMP signaling pathway as an index of reexperiencing symptoms in posttraumatic stress disorder Molecular Psychiatry 2024 Feb 27. doi: 10.1038/s41380-024-02453-4