研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究助成

TOR-4EBPを介した神経活動依存的な翻訳ダイナミクスの解明

研究題目 TOR-4EBPを介した神経活動依存的な翻訳ダイナミクスの解明
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究助成
所属 東北大学 学際科学フロンティア研究所
氏名 市之瀬 敏晴
キーワード 神経活動 / タンパク質翻訳 / ショウジョウバエ
研究結果概要 本研究では神経活動によって引き起こされるタンパク質翻訳の可塑的な変化と、その分子メカニズムの解明を行った。申請者はショウジョウバエの脳において、標的細胞種で翻訳をゲノムワイドに解析する細胞種特異的リボソームプロファイリングを立ち上げ(Ichinose et al., 2023, eLife, Reviewed Preprint)、神経活動に伴って160種あまりのタンパク質の翻訳が促進されることを発見した。興味深いことに、その半分以上はリボソームタンパク質や翻訳因子であり、神経活動に伴ってタンパク質翻訳が上昇することが明らかになった。申請者はさらにその分子メカニズムの解明を進め、リボソームタンパク質のmRNAはmRNP顆粒と呼ばれる液-液層分離で隔離された構造体で翻訳抑制されており、神経活動に伴って放出されて脱抑制されることを見出した。リボソームタンパク質の翻訳の抑制と脱抑制は、Larp1という分子によって制御されており、その翻訳は記憶学習行動にも影響を与えることが明らかになった。以上、神経活動依存的なタンパク質翻訳の全容とその分子メカニズム、その神経生理的な機能を明らかにした。
公表論文 “Translational regulation enhances distinction of cell types in the nervous system”. eLife. Reviewed preprint. doi.org/10.1101/2023.06.15.545207.