研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究助成

肝臓グルコース応答の新規制御機構とその役割の解明

研究題目 肝臓グルコース応答の新規制御機構とその役割の解明
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究助成
所属 金沢大学 新学術創成研究機構
氏名 稲葉 有香
キーワード 肝臓 / グルコース応答 / ストレス応答 / 細胞死
研究結果概要 肥満・過栄養は、代謝臓器で酸化ストレスや小胞体ストレスなどを増加させ、臓器レベルの機能障害のみならず全身の代謝異常や慢性炎症を引き起こす。個体糖代謝の恒常性維持に重要な肝臓は、食後・高血糖環境では糖取込み臓器として働く。脂肪肝では、肝糖取込み能が障害され、食後高血糖の病因となる。我々は、脂肪肝での糖取込み障害に、肝糖取込み制御分子の活性調節タンパク質(GKRP)のアセチル化が重要な役割を担うことを明らかにしている。そこで、GKRPアセチル化または非アセチル化マウスを作出し、肝グルコース応答の糖脂質代謝制御におけるGKRPアセチル化の役割を解明した。さらに、GKRPアセチル化が、肝糖脂質代謝だけでなく、肝ストレス応答に影響を及ぼすことを見出した。肝ストレス応答として、酸化ストレス・小胞体ストレスなどに共通してeIF2αシグナルが増強される。肝細胞におけるeIF2αシグナル活性化とその下流の転写因子の役割の解明を行った。脂肪肝細胞では、eIF2αシグナル増強に伴い転写因子ATF3発現が増加すること、ATF3発現誘導が炎症性細胞死を誘導し、脂肪肝で急性・慢性炎症を惹起することを見出した。
公表論文 The transcription factor ATF3 switches cell death from apoptosis to necroptosis in hepatic steatosis in male mice., Nat Commun., Inaba Y, Hashiuchi E, Watanabe H, Kimura K, Oshima Y, Tsuchiya K, Murai S, Takahashi C, Matsumoto M, Kitajima S, Yamamoto Y, Honda M, Asahara S, Ravnskjaer K, Horike S, Kaneko S, Kasuga M, Nakano H, Harada K, Inoue H., 2023;14(1):167.