研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究助成

失われた極性構造を再生する 階層間コミュニケーションの理解

研究題目 失われた極性構造を再生する 階層間コミュニケーションの理解
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究助成
所属 基礎生物学研究所 初期発生研究部門
氏名 新田 昌輝
キーワード 平面内細胞極性 / 損傷修復 / 卵管 / マウス
研究結果概要 多くの上皮組織は組織の向きと細胞の向きが一致する平面内細胞極性(Planar cell polarity; PCP)を発達させ、機能を発揮する。上皮組織が損傷を受けると幹細胞から細胞が供給され元の構造が再構築される。では、損傷後に供給された細胞はどのような仕組みで自らの向きを組織の向きと一致させるのだろうか。本研究では卵巣-子宮軸に沿った繊毛運動や細胞伸長といったPCPを発達させるマウス卵管を用いて、損傷後にPCPが再構築される仕組みを調べた。損傷修復の過程では繊毛運動や細胞伸長に明確な向きがない細胞や、向きが異常な細胞が見られたが、その後、繊毛運動や細胞伸長の向きは卵巣-子宮軸方向に揃うことがわかった。さらに発生過程でPCPの形成を制御することが知られているコアPCP因子の細胞境界上の分布を調べたところ、損傷修復過程で卵巣-子宮軸に沿った偏りが生じることがわかった。これらの結果をふまえて数理モデルを用いた解析を行い、コアPCP因子間の局所的な相互作用によりPCPが再構築されうることを示した。
公表論文 Coordination of Cilia Movements in Multi-Ciliated Cells. J Dev Biol 2022; 11;10(4):47. doi: 10.3390/jdb10040047. The interplay between Wnt signaling pathways and microtubule dynamics. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 2024 May;60(5):502-512. doi: 10.1007/s11626-024-00860-z.