研究助成

2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

神経変性疾患の原因となるタンパク質凝集体の神経細 胞への取り込みとプリオン様伝播メカニズムの解明

研究題目 神経変性疾患の原因となるタンパク質凝集体の神経細 胞への取り込みとプリオン様伝播メカニズムの解明
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野 認知症プロジェクト
氏名 鈴木 元治郎
キーワード 神経変性疾患 / αシヌクレイン
研究結果概要 多くの神経変性疾患において脳内に異常タンパク質凝集体の蓄積がみられ、その蓄積と病変の広がりが相関していることから、これらの凝集体がプリオン様伝播をし、神経変性を引き起こしていると考えられる。しかし、異常タンパク質のプリオン様伝播の分子メカニズムの多くの部分は解明されていない。そこで、本研究では異常タンパク質凝集体がどのようにして神経細胞に取り込まれ、神経細胞内に蓄積するかについて調べた。野生型マウスの脳内にαシヌクレイン線維を注入し、異常リン酸化αシヌクレインの蓄積が誘導される初期段階を調べた。その結果、リン酸化αシヌクレインは、脳内注射後数日以内に出現し、まず前シナプス領域で観察され、その後、軸索や細胞体にまで局在が拡大した。初代培養神経細胞にαシヌクレイン線維を添加しても同様の結果が得られ、逆行性輸送を阻害することにより細胞体での凝集体形成が抑制された。これらの結果は、細胞外のα-シヌクレイン線維がシナプス前領域に取り込まれ、そこに豊富に存在する内因性の正常なα-シヌクレインをシード依存的に異常なリン酸化型に変換し、軸索を通って細胞体へと逆行輸送されることを示唆している。
公表論文 Phosphorylation of endogenous α-synuclein induced by extracellular seeds initiates at the pre-synaptic region and spreads to the cell body. Sci Rep. 12(1):1163. doi: 10.1038/s41598-022-04780-4.