研究助成

2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

腎淡明細胞癌で異常発現する miR-210 の生物学的機能の解析 ~miR-210 はエネルギー代謝の変動を介して細胞増殖・分化を制御しうるか?~

研究題目 腎淡明細胞癌で異常発現する miR-210 の生物学的機能の解析 ~miR-210 はエネルギー代謝の変動を介して細胞増殖・分化を制御しうるか?~
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 大分大学 医学部 腎泌尿器外科学講座
氏名 中田 知里
キーワード 腎細胞癌 / miR-210 / ゼブラフィッシュ
研究結果概要 「miR-210はエネルギー代謝を制御し、VHLの代謝スイッチ機能を担っており、ネフロン前駆細胞の増殖から分化への移行に関与する」との仮説について、ゼブラフィッシュを用いて検証を試みている。ゲノム編集によりVHL-KOおよびmiR-210-KOを作製し、これを交配してダブルKOを得た。受精後8日目までにVHL-KOとダブルKOにおいて浮腫が観察され、ダブルKOにおいて浮腫がより強い傾向があった。浮腫が生じた個体では近位尿細管において微絨毛の消失やミトコンドリアの減少が認められ、特に浮腫が強い個体(ほぼダブルKOであった)では上皮が壊死していた。miR-210の欠失はVHL-HIFが脱制御されている状況では尿細管上皮への障害を増悪するといえる。また浮腫が強くなるにつれ、組織中の乳酸量が増加しており、解糖系への代謝シフトが認められた。当初VHL-KOの表現型がダブルKOによって軽減される、と予想していたが、結果はこれと反するものであった。しかしmiRNAは細胞内の現象についてfine-tuningを担うとされ、miR-210欠失によって代謝制御が逸脱し、上皮の障害につながった可能性がある。
公表論文