研究助成

2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

RNAヘリケースDDX41の遺伝子変異がRNAスプライシング複合体・RNAポリメラーゼⅡの連携喪失により造血不全を発症させる機序の解明

研究題目 RNAヘリケースDDX41の遺伝子変異がRNAスプライシング複合体・RNAポリメラーゼⅡの連携喪失により造血不全を発症させる機序の解明
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 熊本大学 国際先端医学研究機構
氏名 平山 真弓
キーワード DDX41
研究結果概要 DDX41はDEAD-box型RNAヘリケースのひとつで、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などの骨髄性造血器腫瘍において、約4%の頻度でDDX41遺伝子変異を伴うが、造血器腫瘍を引き起こす機序は未だよくわかっていない。本研究で、DDX41がRNAスプライシングと転写伸長の連携を担い、R-loopの異常な蓄積を防いでいることを見出した。DDX41はスプライシング後半に寄与しているためスプライシングパターンに一定の傾向は与えないものの、DDX41の発現・機能抑制によりRNAスプライシング異常が生じ、未熟RNAがそのまま鋳型DNAとハイブリダイズしてしまい、R-loopが形成されやすい状態になる。これが転写伸長の乱れや複製装置との衝突を招き、DNA複製障害やDNA損傷の蓄積を引き起こし、さらには細胞分裂を経て娘細胞までDNA損傷が引き継がれることを明らかにした。この機序は、DDX41変異が造血器腫瘍を発症する前から骨髄不全・血球減少傾向を示すことを理解する糸口になると考えられる。
公表論文 DDX41 coordinates RNA splicing and transcriptional elongation to prevent DNA replication stress in hematopoietic cells