研究助成

2021年度 医学系研究助成(基礎)

リソソームによる酸素感知が制御する炎症応答エピゲノム

研究題目 リソソームによる酸素感知が制御する炎症応答エピゲノム
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(基礎)
所属 東北大学大学院医学系研究科 医化学
氏名 関根 弘樹
キーワード 低酸素 / ビタミンB6 / 炎症
研究結果概要 酸素は私たちの細胞機能の維持に極めて重要な元素である。そのため細胞は酸素濃度の検知システムを備えており、PHD-HIFシステムはその主要な分子基盤であるとされている。HIFを介した低酸素感知システムは急性の低酸素で主に働くが一方で長期に低酸素が続いた場合にはどのように低酸素を感知するのかは明らかではなかった。本助成金の成果で慢性低酸素下ではマクロファージの炎症反応が遷延化すること、その原因がリソソームの活性低下であることがわかった。またこれらの現象がHIF経路とは独立して活性型ビタミンB6の合成酵素であるPNPOが慢性低酸素で酸素感知する経路として機能することがわかった。PNPOはオキシダーゼの一つで酸素を基質として利用する。PNPOによって合成される活性型ビタミンB6の一つPLPは、生体内の多くの酵素反応に関わり、本研究でリソソームの活性、それに伴う炎症反応の遷延化に関わることが明らかとなった。このPNPO-PLP経路は、これまでHIFを介した転写反応での低酸素応答とは一線を画し、代謝物による低酸素感知機構としてユニークな機構である。
公表論文 PNPO–PLP axis senses prolonged hypoxia in macrophages by regulating lysosomal activity, Nature Metabolism, Published: 31 May 2024 doi: 10.1038/s42255-024-01053-4