研究助成

2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))

NAFLD/NASHを基盤とした肝癌の発症機序の解明と治療への応用

研究題目 NAFLD/NASHを基盤とした肝癌の発症機序の解明と治療への応用
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(がん領域(基礎))
所属 和歌山県立医科大学 解剖学第2講座
氏名 小森 忠祐
キーワード 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝癌 / 運動療法 / サイトカイン / オンコスタチンM
研究結果概要 代謝関連肝癌の原因となる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する最も効果的な治療法の一つが運動療法であることから、単回の運動時のOSMの役割を検討した。OSMは中等度のトレッドミル走行運動(15 m/min、1時間)後に骨格筋線維で産生され、骨格筋マクロファージに作用し、ケモカインの産生によるマクロファージや好中球の遊走、及びマクロファージのM2型へのシフトを誘導し、インスリン感受性を増加させた。次に、NASH増悪におけるOSMの役割を解明するために、OSM遺伝子欠損マウスや肝細胞特異的OSMRβ遺伝子欠損マウスに対してメチオニン・コリン欠乏食給餌によるNASHモデルを作成したところ、肝における細胞障害や細胞死、炎症、および線維化の増悪が認められた。以上の結果より、OSMはNASH増悪を抑制し、NASHに対する運動療法の効果にはOSMの作用が関与している可能性が示唆された。現在、他の細胞特異的(マクロファージや類洞内皮細胞)OSMRβ遺伝子欠損マウスも作製済みであり、それらの系統において代謝関連肝癌のモデルであるSTAMモデルを作製し、新規の発症機序を検討中である。
公表論文 Komori T, Morikawa Y. Essential roles of the cytokine oncostatin M in crosstalk between muscle fibers and immune cells in skeletal muscle after aerobic exercise. J Biol Chem 298: 102686, 2022