研究助成

2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

ストレス依存性微小炎症による進行型多発性硬化症の発症機序の解明

研究題目 ストレス依存性微小炎症による進行型多発性硬化症の発症機序の解明
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 国立大学法人北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子神経免疫学分野
氏名 北條 慎太郎
キーワード 進行型多発性硬化症 / 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE) / ストレス / ゲートウェイ反射 / 微小炎症
研究結果概要 本研究では、独自の進行型多発性硬化症(MS)モデルを用いて、その疾患機序を明らかにすることを目的とした。このモデルでは、心理ストレス依存的に視床周囲の特定血管部位に集積する自己反応性T細胞が微小炎症を引き起こし、迷走神経系を含む特異的な神経回路が活性化されることで上部消化管出血と心機能不全が誘発される(ストレスゲートウェイ(G)反射)。研究期間中に、ストレス依存的に当該血管部位で発現が増加する機能未知な5種類の分子群を同定し、それらに対する中和抗体の脳内投与により疾患を寛解あるいは抑制することに成功した。特に分子Xについては、独自に樹立したモノクローナル抗体の末梢投与でも疾患が抑制され、分子Xは微小炎症の誘導に関与する可能性が示唆された。さらに、微小炎症の起点となる視床下部室傍核(PVN;ストレス中枢)のscRNAseq解析から遺伝子YとZを抽出し、これらの遺伝子を標的としたケモジェネティクス法により、特定血管周囲への病原性免疫細胞の浸潤と全身消耗などストレスG反射の病態を再現することができた。現在、このモデルを用いて、分子Xの機能や末梢臓器に接続する神経系への影響を調べている。
公表論文 1: Furukawa R, Kuwatani M, Jiang JJ, Tanaka Y, Hasebe R, Murakami K, Tanaka K, Hirata N, Ohki I, Takahashi I, Yamasaki T, Shinohara Y, Nozawa S, Hojyo S, Kubota SI, Hashimoto S, Hirano S, Sakamoto N, Murakami M. GGT1 is a SNP eQTL gene involved in STAT3 activation and associated with the development of Post-ERCP pancreatitis. Sci Rep. 14(1):12224, 2024, doi:10.1038/s41598-024-60312-2. 2: Naim F, Hasebe R, Hojyo S, Shichibu Y, Ishii A, Tanaka Y, Tainaka K, Kubota SI, Konishi K, Murakami M. In situ Microinflammation Detection Using Gold Nanoclusters and a Tissue-clearing Method. Bio Protoc. 13(7):e4644, 2023, doi: 10.21769/BioProtoc.4644.