研究助成

2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

神経接着分子を標的とした経鼻的頭蓋内薬物送達の有効性検証とアルツハイマー病治療への応用

研究題目 神経接着分子を標的とした経鼻的頭蓋内薬物送達の有効性検証とアルツハイマー病治療への応用
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 近畿大学 医学部病理学教室
氏名 米重 あづさ
キーワード 細胞接着分子 / 抗体薬物複合体 / IgM / エンドサイトーシス / 抗がん剤
研究結果概要 難治性中枢神経疾患の創薬研究において、経鼻的頭蓋内送達(N2B)経路は血液-脳関門を通過しない治療薬を非侵襲的に脳内へ送達できる経路として注目されるが、N2B輸送には鼻腔内滞留性と鼻腔上皮透過性が求められるため、臨床応用されている点鼻薬剤は未だ少ない。本研究は、神経接着分子CADM1の抗体がCADM1発現細胞に対して透過性を持ち、且つ嗅上皮に特異的に結合して長時間保持される特性を持つことから、N2B薬物輸送体としてのCADM1抗体の実用性を証明し、最終的に脳腫瘍治療へと結びつけることを目的としている。本研究ではCADM1抗体による薬物送達の分子基盤研究を完遂した。研究室にて保有する2つのモノクローナル抗体の配列およびその特性を明らかにし、2つの抗体を組み合わせることによって抗体および標的分子の内在化を促進し、効率的な薬物送達の可能性を示した。実際にヒト中皮腫細胞やマウスメラノーマモデルにおいてCADM1抗体と抗腫瘍薬であるモノメチルアウリスタチンE複合体の抗腫瘍活性を明らかにした。これらの研究成果は本CADM1抗体が薬物輸送体として有用であることを強く示唆するものである。
公表論文 1. Possible Therapeutic Utility of anti-Cell Adhesion Molecule 1 Antibodies for Malignant Pleural Mesothelioma. Hagiyama M, Mimae T, Wada A, Takeuchi F, Yoneshige A, Inoue T, Kotoku N, Hamada H, Sekido Y, Okada M, Ito A. Front Cell Dev Biol. 2022 Jul 12;10:945007. doi: 10.3389/fcell.2022.945007. 2. Efficient intracellular drug delivery by co-administration of two antibodies against cell adhesion molecule 1. Hagiyama M, Yoneshige A, Wada A, Kimura R, Ito S, Inoue T, Takeuchi F, Ito A. J Control Release. 2024 in press.