研究助成

2021年度 医学系研究助成(基礎)

PKD1 KOカニクイザルを用いた多発性嚢胞腎発症機序の解明

研究題目 PKD1 KOカニクイザルを用いた多発性嚢胞腎発症機序の解明
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(基礎)
所属 滋賀医科大学 動物生命科学研究センター 幹細胞・ヒト疾患モデル研究分野
氏名 松本 翔馬
キーワード 多発性嚢胞腎 / 遺伝性腎疾患 / 非ヒト霊長類 / 疾患モデル
研究結果概要 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は最も罹患数の多い遺伝性腎疾患であり、我が国では4000人に1人の割合で発症することが知られている。ADPKD患者は先天的な変異によりPKD1遺伝子の片側アリルを欠損しており、成長に伴い正常アリルにも体細胞変異が蓄積することで発症する。しかしながら、げっ歯類ではPKD1遺伝子のヘテロ欠損のみでは幼若期の嚢胞発生を再現することができず、よりヒトに類似した霊長類モデルでの解析が望まれていた。本研究助成の支援により、我々が作出したPKD1 ヘテロカニクイザルを3年間解析した結果、PKD1ヘテロ個体の腎嚢胞数および大きさが時間とともに増加することが明らかになった。しかし、腎障害マーカーとして知られるクレアチニンやシスタチンCの血中濃度に上昇は見られず、腎機能は未だ維持されていることが示唆された。一方、PKD1遺伝子の変異率が高い個体では、腎容積の肥大や嚢胞数が特に顕著であり、血中クレアチニン量にも有意な増加が見られるなど、重篤な症状を呈することが明らかになった。また、肝臓においても嚢胞が認められる個体も出現しており、ヒト疾患モデルとしての有用性が示された。
公表論文