研究助成

2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)

死細胞除去を促進する脳内メカニズム

研究題目 死細胞除去を促進する脳内メカニズム
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(精神・神経・脳領域)
所属 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科 機能組織学
氏名 小西 博之
キーワード 死細胞 / ミクログリア / アストロサイト / 硬膜 / リンパ管
研究結果概要 神経損傷後、脳内に蓄積した死細胞残骸は、脳に常在するミクログリアや血中から浸潤してくる単球により貪食除去されると考えられている。本研究では、そのような単球系統細胞の貪食に依存しない新たな細胞残骸除去機構の発見を目指した。まず、申請者がすでに見出していたアストロサイトによる死細胞貪食について、自身の実験結果に最新の知見を加え総説論文として発表した(Konishi et al, Glia, 2022)。そのような貪食依存的な除去に加え、死細胞残骸が、近年存在が示された「硬膜内リンパ管」に吸引され脳外へ排出される可能性を、脳梗塞モデルマウスにて検証した。リンパ管レポーターマウスを用い、硬膜内から梗塞巣へリンパ管が侵入することを見出した。梗塞巣内で形成されたリンパ管網内には白血球に加え、様々な形状の死細胞残骸が存在していたことから、梗塞巣内に形成されたリンパ管網は死細胞残骸を脳外へ排出するドレナージとして働くことが示された。脳内に蓄積した死細胞残骸は、単球系統細胞による貪食だけでなく、アストロサイトによる貪食、さらには脳に侵入したリンパ管による脳外への排出により除去されることが示唆された。
公表論文 Phagocytic astrocytes: Emerging from the shadows of microglia, Glia, 70(6):1009-1026, 2022