研究助成

2021年度 医学系研究助成(感染領域)

細菌由来細胞外小胞を介した病原性発現機構とワクチン開発の理論的基盤構築

研究題目 細菌由来細胞外小胞を介した病原性発現機構とワクチン開発の理論的基盤構築
年度/助成プログラム 2021年度 医学系研究助成(感染領域)
所属 京都大学 大学院医学研究科 微生物感染症学分野
氏名 村瀬 一典
キーワード 細胞外小胞 / A群レンサ球菌 / 増殖阻害機構
研究結果概要 細胞外小胞(EVs)は、多くの細菌が細胞外に放出する極少の球状を呈する構造体で、様々な細菌由来分子(核酸、タンパク質など)を内包し、多様な環境下に存在する細菌にとって生存戦略の一端を担っている。本研究では、まず、先行研究で得られた大腸菌EVsによるA群レンサ球菌(GAS)と黄色ブドウ球菌の増殖阻害について、透過・走査型電子顕微鏡を用いた形態的変化を観察した。その結果、EV添加により分裂環の多重形成を引き起こし非対称な分裂が誘導された結果、増殖阻害に繋がったと考えられる。また、EV添加時におけるGASのRNA-seq解析を行った結果、複数の遺伝子群の有意な発現変動がゲノム全体で確認され、その変動は時間経過とともに増加傾向にあり、特に、病原関連遺伝子群の発現量を著しく減退させることが明らかとなった。さらに、EVによるGASの病原性低下が生体における病態形成にも影響するかを確認するため、膿瘍形成モデルマウスを用いて検証した。その結果、EV処理したGASを感染させたグループでは、投与部位への発赤は認められるものの、EV未処理群と比べると膿瘍形成の顕著な減少もしくは消失が確認された。
公表論文 Cytolysin A (ClyA): A Bacterial Virulence Factor with Potential Applications in Nanopore Technology, Vaccine Development, and Tumor Therapy. Toxins, 2022, 14(2), 78