研究助成

2021年度 薬学系研究助成

高精度一塩基置換型ゲノム編集:細胞周期依存性アンチクリスパーの応用

研究題目 高精度一塩基置換型ゲノム編集:細胞周期依存性アンチクリスパーの応用
年度/助成プログラム 2021年度 薬学系研究助成
所属 広島大学 大学院医系科学研究科(薬)
氏名 野村 渉
キーワード CRISPR-Cas9 / オフターゲット作用 / ゲノム編集 / 細胞周期 / 相同組換え
研究結果概要 ゲノム編集技術は医療分野、農畜産分野などで広く応用が進められている。そのなかで、安全性を担保する正確性が重要であり、相同組換え経路による配列修復の高効率化と標的類似配列でのオフターゲット作用低減が課題となっている。これまでに「細胞周期」を利用したゲノム編集で課題を一挙に解決できる可能性を見出している。本研究では「細胞周期依存型ゲノム編集」の正確性を更に高める手法を検討した。CRISPR-Cas9を阻害するanti-CRISPRにG1期で発現するCdt1ドメインを融合し、ゲノム編集時に同時に発現させることでS/G2期にのみゲノム編集活性が上がり、相同組換え型ゲノム編集の効率が向上するという知見を基に、CRISPR-Cas9側の発現や機能性を工夫することでさらにこの効果が高まることを見出した。Cas9にS/G2期に発現するGemininを融合する手法では複数種類のanti-CRISPRも利用可能で、拡張性が高い手法であることも示した。高精度に改良された変異型Cas9のすべてを「細胞周期依存型ゲノム編集」に適用し、SpCa9-HF1が最も優れた結果を示すことも見出した。
公表論文 1. "The History of Genome Editing: Advances from the Interface of Chemistry and Biology." ChemComm 59, 7676-7684, 2023. 2. "Cas9-Geminin and Cdt1-fused Anti-CRISPR Protein Synergistically Increase Editing Accuracy​." FEBS Lett. 597, 985-994, 2023. 3. "SpCas9-HF1 Enhances Accuracy of Cell Cycle-dependent Genome Editing by Increasing HDR Efficiency, and by Reducing Off-target Effects and Indel Rates." Molecular Therapy -Nucleic Acids 35, 102124, 2024.