研究助成

2021年度 ライフサイエンス研究継続助成

細胞集団挙動を介した発生時間軸制御の遺伝的基盤

研究題目 細胞集団挙動を介した発生時間軸制御の遺伝的基盤
年度/助成プログラム 2021年度 ライフサイエンス研究継続助成
所属 名古屋大学 大学院理学研究科
氏名 大澤 志津江
キーワード 発生ロバストネス / ショウジョウバエ / 細胞死
研究結果概要 多細胞生物の個体発生は、時間軸に沿った精密かつ計画的な形作りのプロセスである。種々の内的・外的撹乱により、個体発生の時間軸に歪みが生じた際、その歪みを補正して正確な組織形成を実現するロバストな仕組みが存在すると考えられるが、その実体は不明である。我々は、ロバストな組織形成が実現されるメカニズムを明らかにするために、ショウジョウバエMinute変異体(一連のリボソームタンパク質をコードする遺伝子に機能欠損変異を持つ変異体の総称)に着目した。Minute変異体で幼虫期の個体成長が遅れながらも、最終的には正常な形・大きさの組織が形成される。遺伝学的スクリーニングを実施した結果、幼虫期のMinute変異体の翅原基では、進化的に保存されたがん抑制性のHippo経路の転写共役因子Ykiが活性化し、これにより、細胞死遺伝子Dronc(カスパーゼ9ホモログ)とJNKシグナルが協調することで引き起こされる過剰な細胞死が抑制されていることが分かった(Wada et al., Development, 2021)。
公表論文 Wada Y, Ohsawa S, Igaki T Yorkie ensures robust tissue growth in Drosophila ribosomal protein mutants Development, 148, dev198705, 2021