研究助成

2022年度 ライフサイエンス研究助成

独自の植物ツールと多重遺伝子破壊を基盤とした分子モーターミオシンが駆動する“生殖細胞の輸送動態”の解析

研究題目 独自の植物ツールと多重遺伝子破壊を基盤とした分子モーターミオシンが駆動する“生殖細胞の輸送動態”の解析
年度/助成プログラム 2022年度 ライフサイエンス研究助成
所属 立命館大学 総合科学技術研究機構 生物資源研究センター
氏名 元村 一基
キーワード 花粉管 / 細胞骨格 / 分子モーター / CRISPR/Cas9 / 精細胞
研究結果概要 本研究では植物の花粉管における"精細胞の輸送駆動力"の実体を明らかにするため、主にモーター分子ミオシンに着目して研究を進めた。精細胞の輸送駆動力がこれまで発見されなかったのは、栄養核が精細胞ペアを牽引し、表現型として現れにくかったためと考えられる。そこで栄養核輸送欠損花粉管であるwit1/2を材料に、ミオシンの逆遺伝学的解析を行った。植物は13個のミオシンXIホモログを持ち、精細胞ペア輸送に関わるものを同定するには多重変異株の作出が必須となる。しかし従来の交配法では数年を要するため、当研究ではCRISPR/Cas9ゲノム編集で複数のミオシンXIを同時破壊する手法を用いた。様々な組み合わせでミオシンXI遺伝子を同時に破壊した結果、花粉管伸長と精細胞輸送に特定のミオシン遺伝子が重要であることを明らかにした。加えてこれら花粉管の研究から、花粉管が核に依存せず細胞自律的に伸長することも発見した。助成期間中にこれらの発見を複数の論文にまとめ、発表することができた。そして継続的な研究から生殖に重要な新奇分子を発見しており、現在は発展的な研究に取り組んでいる。
公表論文 1. Possible molecular mechanisms of persistent pollen tube growth without de novo transcription, Front. Plant Sci., 2022, 13:1020306, doi:10.3389/fpls.2022.1020306.
2. Microtubules ensure transport of vegetative nuclei and sperm cells by fine-tuning their home positions, bioRxiv, 2024, doi:10.1101/2024.01.31.578224. (preprint)
3. Temporal Gene Expression and Functional Acquisition in Pollen Tubes, Plant Morphol., 2024, 36:89-95
4. A non-canonical BZR/BES transcription factor regulates the development of haploid reproductive organs in Marchantia polymorpha, Nat. Plants, 2024, doi:10.1038/s41477-024-01669-0
5. Straightforward and affordable agroinfiltration with RUBY accelerates RNA silencing research, Plant Mol. Biol., 2024, 114:61, doi:10.1007/s11103-024-01463-8