研究助成
2022年度 ライフサイエンス研究助成
魚類正中ヒレの進化発生学で紐解く新たな器官の獲得・形成メカニズム
| 研究題目 | 魚類正中ヒレの進化発生学で紐解く新たな器官の獲得・形成メカニズム |
|---|---|
| 年度/助成プログラム | 2022年度 ライフサイエンス研究助成 |
| 所属 | 東北大学 大学院生命科学研究科 個体ダイナミクス講座 動物発生分野 |
| 氏名 | 阿部 玄武 |
| キーワード | 器官獲得進化 / 進化発生 / 正中ヒレ / 新規形質 |
| 研究結果概要 | 本研究は、魚類の新規ヒレ獲得（第一背ヒレ、尾ヒレ倍加）に着目し、器官構造獲得の進化発生メカニズムの解明をおこなった。まず、正中膜ヒレ（MFF）と正中ヒレとの関係を調べるため、MFFに異常を示す変異体と、正中ヒレ原基レポータ-TGを用いた細胞動態解析を実施した。その結果、MFFの初期機能に依存せず正中ヒレ原基が独立に誘導されることを示した。次に、尾ヒレ倍加（twin-tail）形態に着目し、twin-tail金魚およびゼブラフィッシュの尾ヒレ骨格間に異所的中尾筋が出現する過程を、筋肉特異的トランスジェニックラインと抗体染色による可視化解析から明らかにした。その結果、既存の発生プログラムを転用して短期間に機能的形態を形成するメカニズムを示唆した。これらの知見は、魚類正中線上でヒレ構造獲得が繰り返し起こりやすい要因を解明するものである。加えて、棘鰭型類第一背ヒレのモデル動物化および遺伝子導入技術の基盤整備により、得られた知見の再現性と他種への応用可能性を担保した。今後は、上述の詳細な組織間相互作用のメカニズムと、多様な魚類における保存性を解析し、器官獲得モデルの汎用性を確立する予定である。 |
| 公表論文 |
1. Evolutionary Insights into Muscle Fiber Distribution in the Twin Tails of Ornamental Goldfish. Zool. Stu. 2025 64: 4. 2. Anterior-posterior constraint on Hedgehog signaling by hhip in teleost fin elaboration. Development. 2024 Nov 15;151(22):dev202526. 3. The dwarf neon rainbowfish Melanotaenia praecox, a small spiny-rayed fish with potential as a new Acanthomorpha model fish: I. Fin ray ontogeny and postembryonic staging. Dev. Dyn. 2024 Sep;253(9):829-845. 4. The dwarf neon rainbowfish Melanotaenia praecox, a small spiny-rayed fish with potential as a new Acanthomorpha model fish: II. Establishment of a microinjection procedure for genetic engineering. Dev. Dyn. 2024 Sep;253(9):815-828. 5. Exploring the origin of a unique mutant allele in twin-tail goldfish using CRISPR/Cas9 mutants. Sci. Rep. 2024 Apr 15;14(1):8716. 6. Genomic screening of fish-specific genes in gnathostomes and their functions in fin development. DGD. 2024 Apr;66(3):235-247. |