研究助成

2022年度 ライフサイエンス研究助成

アトピー性皮膚炎の増悪に関わる脳内メカニズムと性差解析

研究題目 アトピー性皮膚炎の増悪に関わる脳内メカニズムと性差解析
年度/助成プログラム 2022年度 ライフサイエンス研究助成
所属 国立遺伝学研究所 マウス開発研究室
氏名 高浪 景子
キーワード かゆみ / 慢性掻痒 / 神経回路 / 慢性ストレス / ペプチドホルモン受容体
研究結果概要 アトピー性皮膚炎、ドライスキン、結膜炎のようなかゆみを伴う慢性掻痒病態において、itch-scratch cycleというかゆみによって搔いてしまうことによる皮膚や粘膜の損傷から、かゆみの悪循環が生じることが問題となっている。近年、この慢性掻痒には皮膚の病変のみでなく、かゆみに対する様々な脳領域の活性の変化が関与することが示唆されている。
 本研究では、齧歯類のマウスで報告されてきた脳幹および脊髄知覚神経領域のかゆみを伝達する神経回路が非ヒト霊長類においても保存されていることを明らかにした。また、慢性ストレスモデルでは、かゆみの感受性の著しい増加がみられ、脊髄知覚神経領域のペプチドホルモンとその受容体が関与することが示唆された。慢性掻痒疾患モデルマウスにおいて、かゆみの感受性に性差がみられ、脳幹三叉神経知覚領域のペプチドホルモン受容体発現細胞がかゆみの伝達に関与することが示唆された。
公表論文 Chronic corticosterone exposure evokes itch hypersensitivity and sexual dysfunction in male rats: Relationship between the two distinct gastrin-releasing peptide systems in the spinal cord. General and Comparative Endocrinology, 339:114289, 2023.

Function of gastrin-releasing peptide receptors in ocular itch transmission in the mouse trigeminal sensory system. Frontiers in Molecular Neuroscience, 16: 1280024, 2023.