研究助成

2022年度 医学系研究助成(臨床)

マクロファージ誘導ケモカインCXCL14を標的とした線維化制御療法の開発

研究題目 マクロファージ誘導ケモカインCXCL14を標的とした線維化制御療法の開発
年度/助成プログラム 2022年度 医学系研究助成(臨床)
所属 岐阜大学 整形外科
氏名 河村 真吾
キーワード デュピュイトラン拘縮 / 線維化疾患 / M2マクロファージ / ケモカイン
研究結果概要 デュピュイトラン拘縮は手掌腱膜の異常線維化から罹患指の屈曲拘縮を引き起こして手指の機能を障害する表在性線維化疾患である.本疾患患者の全ゲノムシークエンスによって,複数のWntシグナル関連遺伝子にSNPが同定されているが,本シグナルの制御異常がどのようにデュピュイトラン拘縮の発症や進行に影響を与えるかは不明であった.
本研究では手掌腱膜に存在するTppp3陽性細胞が本疾患の発生母地となることが明らかとなった.そしてTppp3陽性細胞でのWntシグナル活性化はマクロファージ誘導ケモカインCxcl14の発現を上昇させ,CD206+(M2)マクロファージの遊走をもたらした.線維化モデルマウス,ヒトデュピュイトラン拘縮病変の双方においてM2マクロファージが集簇するnicheが存在し,そこにはTGF-βが高発現しており,間質細胞の筋線維芽細胞分化が誘導されていた.線維化モデルマウスに対する抗Cxcl14抗体の投与によって, M2マクロファージの浸潤が減少し,線維化が緩和された.以上より,Cxcl14の制御がデュピュイトラン拘縮に対する新規治療標的となる可能性が示唆された.
公表論文 C-X-C domain ligand 14-mediated stromal cell-macrophage interaction as a therapeutic target for hand dermal fibrosis.
Goto A, Komura S, Kato K, Maki R, Hirakawa A, Tomita H, Hirata A, Yamada Y, Akiyama H.
Commun Biol. 2023 Nov 18;6(1):1173. doi: 10.1038/s42003-023-05558-8.