研究助成

2022年度 薬学系研究助成

大気汚染肺傷害に対するメタロチオネインの機能解析と予防法確立を目指したアプローチ

研究題目 大気汚染肺傷害に対するメタロチオネインの機能解析と予防法確立を目指したアプローチ
年度/助成プログラム 2022年度 薬学系研究助成
所属 武蔵野大学 薬学部薬学科 生命分析化学研究室
氏名 田中 健一郎
キーワード 大気汚染 / 肺傷害 / メタロチオネイン / PM2.5 / 活性酸素
研究結果概要 世界中で拡大する大気汚染による健康被害の予防法確立を目指して、大気汚染肺傷害に対するメタロチオネイン (MT)の機能解析を実施した。本研究では、MT 遺伝子欠損マウス(MT-KO マウス)、及び独自の大気汚染肺傷害モデルを用いた解析から、MT-KO マウスではWT マウスに比べて、大気粉塵依存の肺の活性酸素(ROS)産生が促進し、肺傷害が増悪する事を明らかにした。また、酢酸亜鉛を用いた解析から、酢酸亜鉛がWTマウス肺においてMT 誘導作用を有する事、及び酢酸亜鉛投与によるMT 誘導作用により大気汚染肺傷害が抑制される事を明らかにした。さらに、細胞実験系を用いた解析から、酢酸亜鉛によるMT誘導作用が直接的に大気粉塵依存のROS 産生抑制作用を有する事を見出した。本研究は、大気汚染肺傷害に対してMT が保護作用を有する事を証明した初めての研究である。今後は大気粉塵の長期曝露モデルを用いて両マウスの肺傷害比較、及び酢酸亜鉛の有効性検討を実施し、大気汚染肺傷害の予防法確立に取り組みたい。
公表論文 Metallothionein, an endogenous antioxidant protein, protects against acute lung injury caused by air pollutants. Biomed Pharmacother. Tanaka KI, Uehara Y, Shimoda M, Funayama R, Shiota S, Yamaguchi A, Sugimoto A, Ichitani M, Kadota Y, Kawakami T, Suzuki S, Kawahara M. 2025 Apr;185:117965. doi: 10.1016/j.biopha.2025.117965.