研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)

分子夾雑な細胞内環境における非膜系オルガネラの形成原理の解明

研究題目 分子夾雑な細胞内環境における非膜系オルガネラの形成原理の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)
所属 東京大学 大学院薬学系研究科
氏名 北川 大樹
キーワード 細胞分裂 / 非膜系オルガネラ / 中心体 / 中心小体 / 相分離/相転移
研究結果概要 本研究では、非膜系オルガネラである中心体の中核構造である中心小体の基本骨格の形成原理と、中心小体を囲む二重マトリクス構造の機能を明らかにした。中心小体は、繊毛・鞭毛の基底部としても機能し、細胞分裂やシグナル受容、精子運動など多岐にわたる生命現象を制御している。そのため、中心小体の構造破綻は、がんや繊毛病、男性不妊などの原因となる。中心小体の重要な構造基盤は、九つの三連微小管であるが、三連微小管は通常の閉じた微小管とは異なり、開いた管が側面に連結した非典型的な高次構造をもつ。本研究では、繊毛病原因遺伝子であり中心小体構成因子でもあるHYLS1が微小管の構成因子であるβチューブリンの立体構造を部分的に変化させ、三連微小管特有の連結形成を可能にする作用メカニズムを明らかにした。さらに、中心小体を囲む新規のマトリクス構造・Torusを同定し、既知のマトリクス構造であるPCMと協調して中心小体動態を細胞周期の進行に応じて制御していることを明らかにした。これらのマトリクス構造は、遺伝性疾患である小頭症や細胞の癌化に深く関与しており、今後診断・治療への応用が期待される。
公表論文 Multimodal mechanisms of human centriole engagement and disengagement, EMBO journal 44, 1294 – 1321, https://doi.org/10.1038/s44318-024-00350-8, 2025

Molecular basis promoting centriole triplet microtubule assembly, Nature Communications, 15(1), 2216, https://doi.org/10.1038/s41467-024-46454-x., 2024