研究助成

2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)

脳の健康寿命の維持に向けたニューロンゲノム損傷防御機構の解明

研究題目 脳の健康寿命の維持に向けたニューロンゲノム損傷防御機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ビジョナリーリサーチ助成(スタート)
所属 京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点
氏名 見學 美根子
キーワード 脳発生 / ニューロン遊走 / DNA損傷 / メカノストレス
研究結果概要 脳皮質発生において、幼若ニューロンは激しく変形しながら緻密な神経組織の狭い細胞間隙を遊走する。申請者は、組織間隙を遊走する機械的ストレスにより高頻度でDNA二重鎖切断(DSB)を生じ、直ちに修復して正常発生を進行することを見出していた。本研究ではこのDSB形成・修復機構を明らかにし、機械的ストレスによりDNA損傷する危険を負うニューロンのゲノム保護機構を明らかにすることを目指した。小脳顆粒細胞を用い、隘路遊走in vitro再構成系を確立して、DSB形成・修復に関与する分子を探索した。その結果、DSBがDNA鎖のもつれを切断するtopoisomerase IIbの活性に依存して生じ、非相同末端結合(NHEJ)経路で直ちに修復されることを見出した。また新生ニューロン遊走期にNHEJ責任分子LIG4を欠損する条件付き欠損動物を作成したところ、DSBが修復されずに成熟後もニューロンに蓄積した。またニューロン分化関連分子や機能分子の発現が低下し、進行性の軽度小脳性運動障害が認められた。すなわち正常発生過程のニューロンDSBの制御異常が疾病リスクとなることが強く示唆された。
公表論文 Nesprin-2 coordinates opposing microtubule motors during nuclear migration in neurons. J Cell Biol. 2024, 223(11): e202405032. doi:10.1083/jcb.202405032.