研究助成

2022年度 ライフサイエンス研究継続助成

哺乳類生殖細胞分化を司るエピゲノム制御機構の解明

研究題目 哺乳類生殖細胞分化を司るエピゲノム制御機構の解明
年度/助成プログラム 2022年度 ライフサイエンス研究継続助成
所属 東京理科大学 理工学部応用生物科学科
氏名 前澤 創
キーワード 精子形成 / 生殖細胞 / エピゲノム / クロマチン / 転写因子
研究結果概要 生殖細胞は、細胞分裂を繰り返して細胞数を増やすが、ある時期が来ると減数分裂を起こし、やがて精子もしくは卵に分化する。精子の元となる細胞から精子が作られる際には、数千もの遺伝子発現が変化する。遺伝子発現変化は、ヒストンやDNAの化学修飾や、クロマチン構造変化によってもたらされ、そこでは多くの制御因子が機能している。本研究では、精子形成の分化進行に機能する制御因子の同定およびその制御機構の解明を目的とした。まず、シングルセルATAC-seq法を用いて、分化進行に伴うクロマチン開閉状態の変化を解析し、遺伝子発現を制御するクロマチン領域を同定した。その結果、開閉の変化がみられた領域において、精子形成での機能が知られている転写因子結合モチーフの他に、精子形成期における機能が未知の転写因子結合モチーフが複数見出された。それら転写因子の機能を明らかにするために、機能欠失マウスの作出と表現型解析を実施し、さらにCUT&Tag法を用いて転写因子が結合するゲノム領域を同定した。以上の解析から、クロマチン開閉状態の制御を伴って精子変態に必要な遺伝子発現を活性化する機構を見出した。
公表論文 Maezawa S, Yukawa M, Sakashita A, Barski A, Namekawa SH. Site-specific DNA demethylation during spermatogenesis presets the sites of nucleosome retention in mouse sperm. eLife. 2025 April 9. https://doi.org/10.7554/eLife.105926.1
Maezawa S, Yukawa M, Hasegawa K, Sugiyama R, Iizuka M, Hu M, Sakashita A, Vidal M, Koseki H, Barski A, DeFalco T, Namekawa SH. PRC1 suppresses a female gene regulatory network to ensure testicular differentiation. Cell Death Dis. 2023 Aug 4;14(8):501. doi: 10.1038/s41419-023-05996-6. PMID: 37542070; PMCID: PMC10403552.
Tatara M, Ikeda T, Namekawa SH, Maezawa S. ATAC-Seq Analysis of Accessible Chromatin: From Experimental Steps to Data Analysis. Methods Mol Biol. 2023;2577:65-81. doi: 10.1007/978-1-0716-2724-2_5. PMID: 36173566.