研究助成

2023年度 医学系研究助成(基礎)

脳アミロイド病理の早期段階におけるCD8陽性T細胞の病理学的機能の解明

研究題目 脳アミロイド病理の早期段階におけるCD8陽性T細胞の病理学的機能の解明
年度/助成プログラム 2023年度 医学系研究助成(基礎)
所属 慶應義塾大学 医学部 微生物学免疫学教室
氏名 大谷木 正貴
キーワード 神経免疫 / 神経炎症
研究結果概要 アルツハイマー病(AD)患者脳では、アミロイドβやリン酸化タウの脳内凝集と随伴する炎症が特徴的病理変化であり、病変部位には活性化グリア細胞に加え多様なT細胞が浸潤する。近年、AD患者脳においてCD8陽性T細胞のオリゴクローナル増殖が報告されたが、その病理学的役割は未解明である。我々はADモデルマウスを解析し、初期(3–4ヶ月齢)ではCD8陽性T細胞がアミロイドβ蓄積を促進する一方、進行期(9ヶ月齢以降)では凝集を抑制することを見出した。早期には脳内CD8陽性T細胞は活性化・オリゴクローナル増殖を示し、AD脳特異的T細胞受容体を導入したT細胞は脳内に選択的に移行して病理を悪化させた。また、CCL5-CCR5経路を介して疾患関連ミクログリア(DAM)の増殖を抑制し、Aβ周囲への集簇や貪食を低下させることで病理を進展させた。進行期では脳CD8陽性T細胞は常在型や疲弊様表現型を示し、DAM維持に関与していた。以上より、脳CD8陽性T細胞は病期依存的にミクログリアの機能を制御し、AD病態に多様な作用を及ぼすことを明らかにした。
公表論文 Stage-specific roles of clonally expanded CD8+ T cells in regulating amyloid pathology in Alzheimer’s disease models. Ohyagi, M., Ito, M., Iizuka-Koga, M., Mise-Omata, S., Yoshimura, A. Nat Commun 16, 9458 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-64503-x